ニシンはわたしにとって特別な魚だ。
かつて北海道はニシン漁で賑わっていた。
利尻島でニシン漁師相手の商いをしていた家に生まれ育った私の祖母は亡くなる直前にこの魚の話をよくしていた。
祖母が言うにはニシンの群れが来ると海の上を歩くことができたのだそう。
祖母の最期の言葉は「ニシンが来たよ!」だった。
そんな魚がとれなくなって久しい。我が家の食卓にあがるニシンと言えばカチカチのミガキニシンで子どもの口にはとてもご馳走と呼べるものではなかった。
そんなニシンがちょうど私が北海道に住み始めた2011年頃から再び姿をあらわし始めた。海の上を歩いていけるほどではないが群来(くき)と呼ばれる現象も見られるようになり、スーパーでは生のニシンが並ぶようになった。
ニシンの塩焼きを初めて食べたときはその美味しさに驚いた。
この魚が食卓に並ぶと春はもうすぐである。
炭火で焼くニシンは格別ですよ。
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